歯科医院の電話取りこぼしが年500万円損失になる理由と対策

電話対応に追われる歯科医院の受付スタッフ
診療中の電話対応が新患獲得の大きな課題になっている

診療中に電話が鳴っても出られない。予約の問い合わせがあったはずなのに折り返したら繋がらない。多くの歯科医院で日常的に起きている光景だが、この取りこぼしが経営に与える影響は想像以上に大きい。Apotoolの調査によれば、電話対応の取りこぼしによる機会損失は年間約500万円にのぼる。新患が減ったと感じているなら、電話を見直すだけで状況が変わるかもしれない。

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歯科医院の電話対応で起きている現状

診療中で電話に出られない歯科医院の様子
治療中は電話に対応できず、新患の問い合わせを逃してしまう

診療中の着信に出られない問題

歯科医院の電話は予約、問い合わせ、変更連絡、営業電話など1日に何十件も入る。受付スタッフが治療のアシストに入っていたり、会計対応をしている間は電話に出られない。留守番電話を設定していても、患者はメッセージを残さずに切ってしまうことが多い。

厚生労働省の統計では、全国の歯科医院数は約66,000件。この中で患者の74.4%がオンライン検索を情報源にしており、検索後にまず電話で問い合わせる行動パターンが一般的だ。電話が繋がらなければ、次の医院に電話をかけ直す。つまり、1本の電話に出られなかった時点で新患獲得のチャンスは失われる。

予約希望者の心理と行動パターン

歯が痛い、詰め物が取れた、子どもの歯が気になるといった状況では、患者は今すぐ予約を取りたいと考えている。検索して上位に出た医院に電話をかけ、繋がらなければ次の医院へ移る。折り返しを待つ余裕はない。

自費診療を検討している患者も同じだ。インプラントやホワイトニングの相談をしたいと思った瞬間に電話をかける。その時に繋がらなければ、他の医院で話を聞いてしまう。患者の行動は想像以上に早く、一度他院で話を聞いたあとに戻ってくる可能性は低い。

電話の取りこぼしが年間500万円の損失になる根拠

電話取りこぼしによる機会損失の計算イメージ
取りこぼし率と新患単価から損失額を試算できる

取りこぼし率と新患単価から見る損失額

Apotoolの調査では、電話の取りこぼしによる機会損失は年間約500万円と試算されている。この数字がどう算出されるか、具体例で見てみる。

1日に10本の電話があり、そのうち3本が診療中で出られなかったとする。取りこぼし率は30%だ。月間の営業日を20日とすれば、月60本、年間720本の電話に出られていない計算になる。このうち半数が新患の予約希望だったと仮定すると、年間360人の新患を逃している。

新患1人あたりの生涯価値を考える。初診で5,000円、その後の定期検診やメンテナンスで年間2万円、通院期間を3年とすれば1人あたり6万円程度の売上が見込める。360人が来院していれば、年間2,160万円の売上になる計算だ。ここから実際の取りこぼし割合を考慮しても、数百万円単位の損失が生じていることは間違いない。

自費診療比率が高い医院ほど影響が大きい理由

船井総研のデータによれば、個人立の歯科医院の自費率は14.1%、法人立では22.4%とされている。自費診療の単価は保険診療と比べて桁違いに高い。インプラント1本で30万円から50万円、矯正治療なら80万円を超える案件もある。

自費診療の相談電話を1本取りこぼせば、それだけで数十万円の損失になる。月に2本、年間24本の自費相談を逃していれば、平均単価40万円として960万円の機会損失だ。保険診療中心の医院でも影響は大きいが、自費診療に力を入れている医院にとって電話の取りこぼしは経営に直結する問題になる。

取りこぼしを防ぐための具体的な対策

電話代行サービスやWeb予約システムを活用する歯科医院
複数の対策を組み合わせることで取りこぼしを大幅に減らせる

電話代行サービスの導入

診療中でも電話に出られる体制を作る方法として、電話代行サービスがある。外部のオペレーターが医院の代わりに電話を受け、予約受付や問い合わせ対応を行う仕組みだ。24時間対応のサービスもあり、診療時間外の問い合わせにも対応できる。

導入費用は月額2万円から5万円程度が相場とされている。新患1人の獲得コストを5,000円以内に抑えるのが理想とされているため、月に4人以上の新患を獲得できれば費用対効果は合う計算になる。ただし、医院の雰囲気や対応の質が伝わりにくいという課題もある。導入前に無料トライアルやデモを試し、自院に合うか確認したほうがよい。

Web予約システムとの併用

電話だけに頼らず、Web予約の導入も有効だ。患者がスマホから24時間いつでも予約できる環境を作れば、電話の負担が減る。LANYの調査では、約7割の歯科医院が検索経由の新規患者獲得に課題を感じており、Web予約はその解決策のひとつになる。

Web予約システムの初期費用は5万円から30万円、月額利用料は3,000円から1万円程度が一般的だ。予約フォームに自費診療メニューを掲載しておけば、患者が事前に内容を確認してから予約できる。電話では聞きづらい料金や治療内容もWebなら気軽に確認できるため、問い合わせのハードルが下がる。

注意点として、Web予約を導入しても電話での予約を希望する患者は一定数いる。高齢者や機械操作が苦手な患者には電話のほうが安心だ。Web予約と電話対応の両方を用意し、患者が選べる状態にしておくのが理想になる。

スタッフ配置の見直し

電話対応専任のスタッフを配置するのも選択肢だ。受付スタッフが治療アシストに入らず、電話と会計に専念できる体制を作る。人件費は増えるが、新患の取りこぼしが減れば結果的に売上増につながる。

厚生労働省の補助金制度を活用し、IT導入や業務効率化の支援を受けることも検討できる。予約管理システムや電話対応ツールの導入費用の一部が補助される場合がある。申請には条件があるため、最新の情報を確認したほうがよい。

対策実施後の効果測定と改善

電話対応の効果測定をするスタッフ
継続的な測定と改善で取りこぼしをゼロに近づける

測定すべき指標

対策を実施したら、効果を数字で確認する必要がある。測定すべき指標は次の通りだ。

着信数と応答数を記録し、応答率を計算する。着信数100本、応答数70本なら応答率70%だ。取りこぼし率は30%になる。応答率が80%を超えるようになれば、対策の効果が出ていると判断できる。

新患数の推移も追う。対策前と対策後で月間の新患数を比較し、増加していれば取りこぼしが減った証拠になる。ただし、季節変動や広告施策の影響もあるため、3か月から6か月の期間で平均を見たほうがよい。

自費診療の相談件数と成約率も記録する。電話での問い合わせが増え、実際に来院して契約に至る割合が上がっていれば、電話対応の質が向上している。

継続的な改善サイクル

効果測定の結果をもとに、改善を繰り返す。応答率が上がっても新患数が増えない場合、電話対応の内容に問題があるかもしれない。オペレーターや受付スタッフの対応を録音し、聞き直してみる。患者の質問に適切に答えられているか、予約まで誘導できているか、確認する。

Web予約の導入後も、予約フォームの項目が多すぎて途中で離脱されているかもしれない。Googleアナリティクスなどのツールで予約ページのアクセス状況を分析し、離脱率が高い箇所を改善する。

患者の声を直接聞くことも大切だ。来院時に予約方法について簡単なアンケートを取り、電話が繋がりやすかったか、Web予約は使いやすかったかを確認する。患者の意見を反映させることで、さらに取りこぼしを減らせる。

電話の取りこぼしは見えにくいが、確実に存在する損失だ。診療に集中しながら新患を増やすには、電話対応の仕組みを見直す必要がある。現状を数字で把握し、対策を実施し、効果を測定する。このサイクルを回すことで、年間500万円の損失を防げる。

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